自社株買いが増えた2つの理由とは?自社株買いの目的やメリット・デメリットを検証

執筆者:株のカタチ運営事務局

自社株買いの目的やメリット・デメリット、株主への影響について、またなぜ自社株買いが増えているのかについて検証。企業が自ら発行した株を買い戻す自社株買いについて決算時期に多くなっている自社株買いの企業側、株主側のメリット・デメリットなどをご紹介しています。

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自社株買いが増えた2つの理由とは?自社株買いの目的やメリット・デメリットを検証

自社株買いとは、企業が自ら発行した株を買い戻すこと。株主に資金を還元する代替のより柔軟な方法を表しています。企業のレバレッジの増加と組み合わせて使用​​すると、自社株買いは株価を上昇させる可能性があります。

特に決算時期に多くなっている「自社株買い」。急増し始めた2022年度の上場企業全体の取得枠は9兆円超と16年ぶりに過去最高を更新しており、投資家目線でも自社株買いは注目したいポイントのひとつとなっています。

今回は自社株買いの目的やメリット・デメリット、株主への影響について、またなぜ自社株買いが増えているのかについて検証していきます。

自社株買いの企業側のメリットとは?

企業が自社株買いをすると以下のようなメリットがあります。

自社株買いの企業側の3つのメリット
  1. 株価が上昇しやすい
  2. 敵対的買収を防げる
  3. 配当金を節約できる

1. 株価が上昇しやすい

自社株買いは株価へ影響を与えやすく、企業は取得した自己株式を消却することで発行済株式数を減らすことができ、一株当たり利益(EPS)や自己資本利益率(ROE)など財務指標を改善することができます

このことからも基本的に企業の自社株買いの発表は投資家にとってはポジティブな評価となることが多く、株価が上昇しやすくなる傾向があります

2. 敵対的買収を防げる

敵対的買収はM&Aの手法のひとつで、買収企業が買収対象企業を実質的に支配することなどを目的として、当事者(支配される立場の企業や株主など)の合意を得ないまま、買収対象企業の株式の多くを買い集めること。基本的には経営権を獲得するために過半数の株式取得を目指す形で行われます。

株価が上がれば1株あたりの株価が上昇するため、経営権を獲得するためには買い集めるための資金もより多く必要となります。

敵対的買収は経営権が獲得できる株式の発行総数の3分の2超を取得する必要があるため、自社株買いによって株価を上昇させることで結果として敵対的買収を諦める可能性が高くなります。

3. 配当金を節約できる

配当を出している企業の場合、自社株を買えば、市場に出回る株式の数が減少し、会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益が増えるため、1株当たりの利益が増えることを好感して株価水準が高くなる場合があります。

株主への利益配分を増やす方法として増配自社株買いか、どちらを選択するかにおいても株主にとっては重要な動きとなります。

そして企業側にとっては市場に流通している株式が少なくなることで、配当金を節約できます。これは自社株に対して配当金が発生しないためとなります。

自社株買いの企業側のデメリットとは?

企業が自社株買いをすると以下のようなデメリットがあります。

自社株買いの企業側の2つのデメリット
  1. 自己資本の比率が低下
  2. 手持ちの資金が減る

1. 自己資本の比率が低下

自社株買いは自己資本を使って行うため自己資本率が下がってしまい、自己資本率の低下は財務状況の悪化に見えることもあるため、株主が離れてしまう可能性も考えられます。

自己資本比率とは「自己資本÷総資本」で計算される企業の安全性を判断するための指標で、この自己資本比率が下がるほど周りからは企業の財務体質が悪化しているように見えてしまいます。

2. 手持ちの資金が減る

株式市場にある自社株を自ら買い戻すという点で多額の資金が必要となります。

手持ちの資金を使うことで、経営が悪化する可能性もあり、また設備投資や研究など、将来への投資にお金を使えなくなることもあり得ます。

自社株買いを行うことで一時的に株価を上昇させたとしても、資金不足によって成長力が阻害されていると投資家から判断されると、中長期的には株価が下落する可能性もあります。

自社株買いの株主側のメリット・デメリット

自社株買いは株価が上昇しやすくなるため、株主にとってメリットとなる場合もありますが、デメリットになる場合もあります。

自社株買いの株主側のメリット・デメリット

メリット株価の上昇が期待できる
デメリット利益確定のための売りが増える場合がある

一時的な上昇を狙って自社株買いを発表した銘柄に乗るのも一つの手段ですが、保有し続けていた銘柄が自社株買いを発表した場合、どこかのタイミングで大きく下落してしまう可能性もあるため、全ての株主にメリットがあるとは言えないかもしれません。

自社株買いが増えた2つの理由

自社株買いを行う企業が増えている理由は以下の2つが考えられます。

自社株買いが増えた2つの理由
  1. コーポレートガバナンス・コード
  2. PBR1倍割れ改善

1. コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンス・コードとは、東京証券取引所が実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの。

コーポレート・ガバナンスとは?

コーポレート・ガバナンスとは、企業経営を管理監督する仕組みこと。株式会社の場合、会社の所有者である株主の利益を最大限に実現できているかどうかを管理監督するシステムのことをさします。

コーポレートガバナンス・コードでは資本コストを意識した経営を求めており、手元資金の有効活用の手段のひとつとなっている点が挙げられます。

経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人的資本への投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。

2. PBR1倍割れ改善

2023年4月、東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)の低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するよう要請。

東証の要請を受けて、株式市場では「低PBR企業の資本効率や収益性が改善する」との思惑が広がり、海外投資家などから割安株への買いが入る場面もありました。

2022年時点でなお東証株価指数(TOPIX)採用企業の5割ほどが「PBR1倍割れ」となっている現状を指摘したこともあり、自社株買いや増配などの施策が相次ぐこととなりました。

まとめ

今回は自社株買いの目的やメリット・デメリット、株主への影響について、またなぜ自社株買いが増えているのかについて検証していきました。

「PBR1倍割れ」の自社株買いが銘柄として注目に値するのかは銘柄によりますが、この判断材料だけで注目するのは難しいかもしれません。

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この記事を書いた人

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